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建築カタリストのリノベ・建築よもやま話

施主支給のコツ、お教えします

前回、「こだわりを実現する施主支給をご存知ですか?」の記事で施主支給という手法をご紹介しました。今回は、施主支給を上手に使いこなすコツをお話ししたいと思います。

僕が住まいのリノベーションで非常に大切だと思っていることがいくつかあるのですが、そのうちの2つが、施工スケジュールを滞らせないことと、お客さまの「こうしたい」を可能な限り叶えることです。
スケジュールが遅延・変更になると手戻りや作業日数が増え、職人に支払う日当も増えてしまいます。
つまりスケジュールを守るとは、お客さまに余計な出費をさせてしまう事態を避けることでもあるのです。
ですがスケジュールを優先するあまり、お客さまの「こうしたい」を見過ごしてしまっては良いリノベーションはできません。お客さまの希望とそれを実現するための段取り、このバランスを取るのが僕の腕の見せ所です。

さて、話を戻しましょう。施主支給を上手に活用するコツは、たった2点です。

  1. お客さまが心底気に入ったものを施主支給の対象にする
  2. なるべく早く「これを使いたい」という希望を現場に伝える

建築資材は一般的に専門の商社が扱っています。このことは前回も少し触れました。
様々な建築資材の直販サイトが開設されて久しい昨今、そうしたサイトで卸値と謳われているといかにも安くお得感があるように見えます。

これら直販サイトの大半は、建築資材の商社がB to Cの窓口として運営しており、建築業に携わる会社は同じ商社のB to Bの窓口から仕入れています。国内で流通しているものについては大抵の場合、出処は同じなのです。

では価格はどうでしょうか?オンラインショッピングモールに出店している直販サイトの場合、売上に応じてモールへの手数料が発生します。価格にはその分をあらかじめ上乗せしておかなくてはなりません。また、B to Bよりも低すぎる価格設定をするとB to Bのお客さんから怒られてしまうため、結局同じくらいの価格に落ち着く傾向があります。

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さらに、直販サイトから施主支給で購入・搬入した場合、前回お話ししたように取り扱いが非常にデリケートになるため、現場の段取りのために別途手数料をいただくことになります。
取り付け工事が必要なものであればその費用もかかりますし、最終的にB to Bで仕入れた方が安かったという結果になりがちです。安さを求めていた場合は本末転倒ですね。

こうして見て行くと施主支給は面倒だしやらない方が良いんじゃないの?と思われるかもしれません。確かに面倒なことは事実です。
ですが、大量に流通していない作家ものや、海外仕様のキッチン、ヨーロッパのタイルなどを使いたい場合には、僕たち建築業者が普段使わないルートをお客さまご自身で開拓されることも多く、施主支給という手段のメリットが大きくなります。

こうした施主支給では、お客さまご自身がそれぞれのアイテムに強いこだわりや思い入れを持たれているため、普通であれば面倒だと思うことも「これを使うためなら頑張る!」と乗り越えられてしまうという効果もあります。

そして建築業者が普段取り扱わない資材を使うのであれば、どんな部品を使うのか、どうやって取り付けるのか、など仕様の下調べが非常に重要です。海外の建築資材でよくあるのが、日本のそれとは違い部品の統一規格が整備されておらず、使うべき部品を調べて別売りで購入しなければならないという状況です。
こうした場合に備えて、実際に施工が始まる前に「これを使いたい」とお伝えいただければ、念入りに調査を行い、取り付け工事を行う職人との打ち合わせや前後の工程との段取りをしっかり行い、トラブルの芽を摘んでおくことができます。これがなるべく早く希望を伝えていただきたい理由です。

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通常の搬入に比べどうしても手間がかかってしまう施主支給ですが、お客さまのお気に入りを住まいに取り入れられるとても良い手段であることは間違いありません。
今回お話しした2点を踏まえ、施主支給を有効活用していただければと思います。